旅人の物語【海の幸車】
旅の通りがかり、漁村近くを歩いている時だった。
手前向こうに、車輪を付けた家が見えた。ふと屋体なのかと思ってみるが、大きさと運ぶ人数が、それを払う。
気になったので寄り道を決めて、向こう側へと移動している間に、車輪を付けた家は、たたきのような所から海へと落とされた。
どうゆうことなのかたずねると、亡くなったただひとりのために行われたことらしい。
海の中にいる魚のために、車輪が付いた家を作った者がいる。
遠目に見て、玄関も窓の辺りの戸もついていなかったが、なるほど魚が住みやすくする思いやりなのか、と腑に落ちた。
やがて苔や藻がはえて、小さな魚たちの安全なすみかになる。
家の中の本棚には挿し絵付きの本、そのページに、なぜこうしたのかの説明書をはさんであるらしい。
誰が読むとゆうのだろう?
まったく素晴らしい。
手製の絵画は、額縁に入れて壁に。
木箱には、訪れた者のために、中身が入ったままの酒瓶が何本もあって、布袋には、コインと安物の人工真珠が入っているらしい。
「この界隈には、人魚伝説でもあるんですか?」
「は?」
「じゃあ、誰のために?」
「知らないな。人間が持ってく可能性のほうが、高いと思うがね」
なるほど、その可能性をなぜか後回しにしていた。
自分の空想した阿呆な面に頭がやられたんだと思う。
日誌に【海の幸車】と書いておいた。
「きっといつか自分も、あんなことをやらかすことになるんだ」と思うと、執筆中、口角が少し上がった。
ー☆ー
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