魔法使いの黒猫に頼まれた帽子
猫を拝む街ヴィヴィアンの、帽子屋。
そこに黒猫が一匹、
開いている玄関口から店へ通り抜けた。
対応したのは
店員の妖精。
黒猫が言った。
「注文の品を取りに来た」
「うかがってる、スよ~。
お金は先にもらっています~」
注文の品は、小さな三角帽子。
先が少しひしゃげていて、
つばの部分には切り込みが入っている。
リボンと造花も飾られている。
「あなた宛にメッセージカードです」
「我は字が読めぬ。訳してくれ」
「【私の黒猫に帽子を贈る】」
「ほう!この素敵な帽子を?」
「そのようです」
「なるほど、こにくらしいな。
どれ、その帽子かぶせてくれ」
「鏡、見ますか?」
「もう、帰る。
家でたっぷり見るからさ。
邪魔したなぁ~」
「またの、おいでやす~」
ご機嫌な黒猫は帽子をかぶったまま
店を出て、街並みに姿を消した。
店員をしている妖精は
休憩入ります、と声を透す。
そこに可憐な少女が現れ、
素敵な帽子をかぶった黒猫を見た、と
言った。
「私の猫用にもみつくろっては
もらえないでしょうか」
店主が、はいよ、と言って椅子から立ち上がり、自分の腰をとんとん叩く。
「てんちょ、大丈夫かなぁ・・・」
エプロンを脱いでくぎにかけ、
妖精は休憩に入った。
ー☆ー
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