言之葉明日香:第3章【本に咲く花】
分厚い海老茶色の本を開いて、そこに水差しで綺麗な水をやる。すると本の花が咲いた。花はぶるぶるとふるえ、余分な水滴をあたりに散らした。
ほ~、とお弁当を届けに来ていた妹が、関心する。
魔法使いの新米である俺は、成功したかもしれない、とぼやく。
本の中から花をすくいつむと、水の花は弾けてしまった。
んん~、と、うなる。
「今回は成功しそうな気がしたのに」
そこに幼馴染みのレアンがはなれに訪れた。そう言えば玄関の扉は開け放ったままだ。レアンは手荷物をしめした。
「ブランデー入りのチーズケーキ、そろそろ食べたくなるんじゃないかと思って」
「素晴らしいね」
「何をしているところだったの?」
「本の花の成分調節」
「これって、食べれたりするの?」
「口に入れてもいいけど、多分、死ぬ」
「そうなの」
そう言ってフォークでさしたチーズケーキを口に持ってこられて、あーん、と言われたので、何かの錯覚で死ぬかと思ってしまった。
レアンは天然系美人女子。
計算と無縁かもしれないひとだ。
俺の名前?
オフィリスア。
新米魔法使いだ。
ー第3章ー
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