言之葉明日香:第4章【天気雨訪れる】
敷地内の庭にゴツゴツした白い岩田があって、そこに兄こと新米魔法使いのオフィリスアと幼馴染み美女レアンが、秘密基地だけど立派になってきたから見せてあげると、庭を案内された。
植物のツタが張る橋を渡り、目的地にあったのは、枝垂れ梅。
「すごーい、なにこれ?」
「「しだれうめ」」
兄が、君の生まれた日に植林してもらったんだ、と言った。
「本当の話、なの?」
そうなんだよ、とレアン。
本当だよ、と兄。
「すっげーぇーっ、やべぇ、やべぇくらいしか言葉が出てこないから、勉強はじめるー」
「「君のそんなところが好き」」
「気に入ってる、って意味?」
「「そう」」
「すげぇーっ、やべぇ。お弁当お届け係しててよかったー」
「「うんうん」」
しばらく秘密基地を散歩させてもらっていると、レアンが手をかざした。
「・・・雨?」
降りだしたかと思うと、どうやらスコール。
レアンが楽しげにターンをして、空を見上げた。
「梅が散ったらどうしてくれるんじゃいっ」
気合いを入れながら、横に両手をつきだす。
数秒、雨粒が空中で止まった。
のれんのように、雨粒を払ってみる兄。
いっぱくご、また雨が降りだした。
「ちぇっ、こんなもんか・・・」
「すっげぇーなぁ、魔法使いとして素質あるんじゃねぇの?」
「まるで魔法みたいだね」
レアンが言うと、兄がまたたいた。
「また、ここで言った。魔法みたいだね、って・・・」
「ああ、そう言えばその日も雨降ってたね」
「うんうん」
気がつくと雨が止んでいて、服も髪も濡れて体にはりついている。
レアンが金髪をかきあげた。
「ライター持ってきてたらよかったのかなぁ?」
その日一日中、なんのことなのか気にしていたが、妙に話題はそれるばかりで確認のタイミングはなかった。
そんなことより、何かしだれうめのお礼を考えねば。そうだ、気合いを入れてお弁当を作ってみよう。
翌日兄にそれを言ったら、兄はどうやら自分の気持ちに目覚めたようだった。
「毎日、食事についてレアンに相談したい。可愛い妹よ、ありがとう。レアンと結婚、したい」
「それでいいと思うよ」
幸せになってしまえ、むくわれてしまえ、ついでにうかばれて、天に昇り、生きていながら成仏して、天国に行ってしまえ。
兄オフィリスアに、毎日言いたいことはそんな感じのことで、はじめて感覚が言葉になった。
口に出すかどうか、今度レアンにそれとなく相談しよう。
ついでに、あの美味しいケーキのレシピも聞いておこう。
料理?
気合いでどうにか、なるだろう。
今は、できそうな気がする。
ー第4章ー
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