白魔女さつきの宴のレシピ

ファンタジックなものをおもに投稿したいと思っています。西洋風か和風のファンタジーどちらにしようか迷ったのですが、もしかしたら両方を投稿します。

ピンクの赤髪

気配に気付き振り返ると、

遠くから馬が走って来る。


突如いななきと共に

上半身を起こした馬をいさめ、

目の前に現れたのは

ズボン型に腰布をした

ベリーダンサー服を着た美女だった。


その女が笑う。


「お久しぶりね」


「あいかわらずのじゃじゃうま」


女は馬に言った。


「ですって」


馬が言った。


「え?うちに言うたんけ?」


近くの酒場に入り、

彼女がすすめた

ロベロベジュースを頼む。


出てきたのは紫色の飲み物。


香りも味もオレンジなので、

最初はその違和感みたいな錯覚に

顔をしかめた。


「それで、最近は何をしているって?」


「ピンクの赤髪」


「え、伝説の?」


「ああ、探しに旅に出ていた」


「そんなに迷信深いの?」


額に獣を思わせる

螺旋を描く角が一本はえている男は

言った。


「世の中は広い」


「それで?」


「嫁にもらうことになった」


「え?」


「どうか祝福してくれ」


「信じがたい」


「今度、羽根のはえた人魚の話でもしてやろう」


「ええっ?本当におじさまは会ったの?羽根のはえた人魚にっ」


向かい側に座っている

女の腰が浮いた。


「今は婚礼の準備中でなかなか忙しい。ピンクの赤髪とは密にそうつもりだ」


「じゃあ昔みたいに、冒険のお話は?」


「落ち着いたら、してやろう」


「うーん・・・」


「何か不満なのか?」


どかりと席に座り直し、

酒をいっきに流し込んだ女が、

ひといきついて、

杯をテーブルに置く。


「いつか冒険してやるんだわ」


男は微笑した。


「本を出す予定だから」


「もう、挿し絵の竜じゃ足りないのよ」


「ほぅ」


「おじさまと結婚するものだと思ってた頃から、ずっと冒険に出たかったのは、きっと定められし相手がどこかにいるに違いないのだわ」


「うむ・・・おじさまではなく、君の王子さまとよべる者と結婚なさい」


「案ずるより生むがやすしよ」


「思い立ったが吉日のことか」


「きっと緑の金髪を見つけてやる」


女は明後日、

例の馬に乗って旅に出た。


霧の出た早朝だった、と、

彼女のおじの本には記されている。




ーおわりー


[名前紹介]


女→ブランカ

男→アリアス

馬→フェアリール