魔法の国の妖精の里【植物卵の収穫祭】
「あれ?あのこの羽根、なに?」
「ああ、ビタだよ」
「蝶の羽根?」
「そう、蝶の羽根のビタ。お届け物係」
「ほ~・・・なかなか可愛いね」
「あっ。ルーアンもいる」
「ルーアン?あの美女?どこ?」
「最近、ビタとルーアン、仲良し」
「あ。空想屋係のフセンだ・・・髪の毛、短くなってる~」
「さぁ、仕事、仕事」
今日は植物卵の収穫祭。
にわとりの卵に成分や役割がよく似た、『卵草:たまごくさ』という実が魔法の国にはあります。
一晩でいっせいに実をつけ、収穫していいのはその日だけです。
なので収穫祭を催し、頭数をそろえてるってわけ。
色と柄がついているのが、無精卵。
無地が有精卵。
無精卵しか、収穫してはいけません。
有精卵はいずれまた、実をつけるから。
「よもぎの、テンプラ~♪」
「食べ物のことしか頭にないのかい?」
「なんで?いいじゃん、べつに」
「俺の気持ちに、気づいてるよね?」
ねぇ、この微妙な感じはなんなの?と、蝶の羽根のビタが、食料調達係の男子ボリスを呼んだ。
ビタたちのところに飛んでいくボリス。
他の食料調達係たちが、もうちょっとでだったかもしれないのにぃ、とぼやきます。
しばらく、ボリスの案内の様子を見つめていた女子カリーネがぼやきます。
「私、どうかしてるのかな・・・?
胸が苦しいくらい、ボリス見てる」
「恋」
「なにそれ、美味しいの?」
「いいからいいから、収穫はじめよう」
カリーネはそばにあった星柄の卵草の実を、ぶちり、と少し失礼にもぎ、あ、と我に返りました。
「失礼な収穫しちゃった。ごめんなさい」
戻ってきたボリスがそれを聞いて、カリーネに話しかけます。
「一緒に収穫しよう?」
「なんで私?」
「なんでか、君がいいと思った」
「なんだ、分かった」
「うんうん」
ボリスとカリーネは、収穫をはじめます。
他の調達係たちは、分かったって言ってたけど気持ちに気づいてるのかね、について、ぽつぽつ喋りながら収穫祭をつとめました。
「フセンって、ルーアンとビタ両方の恋人なの?」
カリーネの言葉に驚きすぎて、持っていた卵草の実を落とすフセン。
ボリスは転がった実を調べ、少し不機嫌に、無事でよかったよ、と言いました。
「まんず、ずまね。かわりに、あやまる」
ボリスは美女ルーアンの喋り方に卵の実を落としそうになり、目をぱちくりすると、驚きすぎて記憶が少しなくなっていました。
「・・・え?あ。収穫祭?」
ー☆ー
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