言之葉明日香:終章【金のライスシャワー】
プロポーズをしたいから、その場に居合わせてくれと兄に言われたので、レアンをピクニックに誘った。
それはそれは冴えた青空に、涼しげに流れていく雲、風は肌に心地よく、レアンの手作りお弁当は心底美味しい。
そんな中、緊張しているのか兄はむっつりしてる気がする。
なんとかレアンに話しかけて時間をとっているが、兄は木漏れ日の中、突然切り出した。
「レアン、俺と結婚してくれ」
「ん?」
口に食べ物が入っていて、飲み込むまでしばらく間があった。
レアンがこちらに向く。
「どう思う?」
「え、別にイヤじゃないよ」
「じゃあ、オーケーだよ」
「私になんで聞いたの?」
「昔さ、伝説の蝶々花のブーケの話したよね?」
「したな。庭で育てておる」
「じゃあ、ブーケにして」
「分かった。赤と黄色と青、どれ?」
「青」
「無視、かよ?」
「もう、帰る」
レアンは立ち上がり、しばらく歩いて、ふりむきざま大声でこちらに言った。
「今度こそ本当にしないと、殺すからなっ」
唖然としている私をよそに、兄が叫ぶ。
「金のライスシャワーにしようっ」
昔何があったのかは知らないが、これ以上無視されるなら、ライスシャワーを炊いて投げてやろうかと思った。
ーー
ーーーーー・・・挙式。
青い蝶々花のブーケを、思いっきり投げたレアンは、こぞって受け取りに並んでいた人波を軽く越えたブーケを、私が思わず掴んだのに大笑いをして喜んだ。
ひそかに思いを寄せている同級生の男子が、蝶々花が珍しいと言って近づいてきた。
兄よ、今だ、魔法で彼に恋をさせろ。
そんなことを思いかけたが、できても兄はそんなことをしないひとだと思う。
地道にこのきっかけを恋愛に持っていくしかあるまい。
「前々から、君と話してみたかったんだ」
そう言われて、子宮が鳴きそうになった。
兄がくれた、魔法の言葉。
アスカ。
意味??
明日は明日の花が咲く。
その言葉を思い出し、
まるで魔法にかかったみたいだ、
と思って、
きょとんとしてしまった。
「明日は明日の花が咲く」
「それスゴい。お兄さんからの言葉でしょ?」
ぜひ、この殿方と結婚しよう。
そう思ったのがなつかしい。
その彼との結婚式前夜、この話をまとめてみた。
このお話は、ここで終わる。
明日、違う苗字になる。
この一連の話は、
魔法書を通して訳される。
最後に、
これを読んだ者に言いたい。
明日は明日の花が咲く。
書記者【キーリー・ロザイナ】
ーおわりー
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