白魔女さつきの宴のレシピ

ファンタジックなものをおもに投稿したいと思っています。西洋風か和風のファンタジーどちらにしようか迷ったのですが、もしかしたら両方を投稿します。

牡丹と薔薇

そこにふたりの少女がいる。


一方は恵まれた世界で

表現の道を極めんとする者。


もう一方は貧しい家に生まれながらも、

その能天気な自分の個性を

いかす表現をして残った者。


甲乙つけがたいその演技に、

映画監督はオーディション会場で、

ふたりを合格させた。


映画の撮影で

姉妹役になったふたりは、

書きかえられた台本に

多少なりと動揺した。


ラストシーンで、

燃え盛る邸から出てくる場面は

本物の火を使った一発撮りだ。


古い建物の中でスタンバイ。


そして、少女ふたりは

火事に巻き込まれた。


抜けた床に転び、

令嬢は両足をくじいた。


煙で周りは見えなくなってくる。


「あなたは逃げて」


「演技を続けましょう」


そう言った素朴な美人の方は、

可憐な令嬢をおぶり、

邸から出てくるとセリフを言った。


「ざまぉみろっ」


台本通りばか笑いをする令嬢。


ーー

ーーーー・・・


「カットっ」


急いで火は消され、

煙を吸いすぎた素朴な美人の方は、

倒れこんだ。


可憐な令嬢が言う。


「しっかりしてっ」


空に向かって手を伸ばす素朴な美人は、

すすに汚れた顔で微笑した。


「あなたの、ライバルになりたかった」


その言葉を最後に、

素朴な美人は、

息を引き取った。


可憐な令嬢が

その場にへたりこんで言う。


「なにもかにも恵まれて育った・・・ただひとつ、わたしには足りないものがあった・・・ライバル。わたしはあなたを、ライバルとして認めます」


令嬢の目から、涙が伝った。


「こんな場面は・・・

 本当に涙が出るのですね・・・」


令嬢は泣き崩れそうな自分に苦笑した。


のち令嬢は女優業を極め、

有名な表現者育成の学校を

作ったそうだ。




ーおわりー


[追記:名前紹介]


レタス→素朴な美人

ショウビ→可憐な令嬢