鯉は空を駆ける龍に、恋をしました。
きっと想いを伝えるんだ、と。
シュッセという名前のその鯉は、
滝を昇りきりご褒美に龍になりました。
やがて結婚をしたシュッセの、
その努力のさまを、
絵師たちが描いているのだとさ。
その絵のことを、
シュッセゴイ、と呼ぶのだそうだ。
ー魔法の森の住人よりー
鯉は空を駆ける龍に、恋をしました。
きっと想いを伝えるんだ、と。
シュッセという名前のその鯉は、
滝を昇りきりご褒美に龍になりました。
やがて結婚をしたシュッセの、
その努力のさまを、
絵師たちが描いているのだとさ。
その絵のことを、
シュッセゴイ、と呼ぶのだそうだ。
ー魔法の森の住人よりー
「人魚が見たいわ」
若いが、もう長くはないと告知された病床の可憐な女が言った。
兄やである美しい男が、探してきますと言って、芍薬の花を持ってきた。
「あら、お花?」
「これは人魚の鱗でできた花」
「まぁ、どうゆうこと?」
「私はムゲンという力を使って、自然とはがれた鱗を人魚からわけてもらい、それを花にして見舞いに来た華鬼です。兄やの姿を借りています」
「ありがとう、華鬼さん」
「鱗花だけですいません」
「兄や、気持ちが嬉しいわ」
少女は涙を流し、おもむろにまぶたを閉じて、間もなく息を引き取った。
様子を視ていた情緒や人情がない彼女のきょうだいが、「鬼が出た」と叫んだ。
周りの者は、なにがどうなっているんだ、と不審がるばかり。
「ムゲンという力を使いました」
「それはなんだ?」
「ゆめまぼろし、と書いて、ムゲン」
兄やは奉公先から出されたが、のちに物書きとして出世し、その称号を「華鬼」とたまわった。
ーおわりー
[ 名前紹介 ]
称号華鬼→禮:らい
若い女→由李祢:ゆりね
闇の中、小人がひとり、舞い終った。
桜色の光の魔方陣が、
沸き立つように金色に変わった。
おもむろに目を開いた小人の背中、
そこには透明な羽根。
「妖精になれたんだ・・・」
妖精になった小人がそう言うと、
空中にただよっている
桜色と金色の光のつぶが輝いて消えた。
「綺麗・・・」
そうつぶやいた瞬間、
闇が光であふれ、
そのまぶしさに目を細めていると、
いつの間にやら
冴え渡る空模様を見つける。
羽根を使って近くにあった花の香りをかいでみると、いい香りがした。
妖精になったそのこは、
妖精の里を目指し、
はえたばかりの羽根で
森へと飛んで行った。
ー☆ー