白魔女さつきの宴のレシピ

ファンタジックなものをおもに投稿したいと思っています。西洋風か和風のファンタジーどちらにしようか迷ったのですが、もしかしたら両方を投稿します。

光の末裔

黄緑色の液体で満たされたガラスの

円柱の中に、彼女はいた。


気泡の水玉に光が宿るのを見つけ、

内心綺麗だと思ってしまった。


僕の存在に気づいたのか、

眠っているように見えた彼女が

うっすらと目を開け、

僕を見つけた。


機械を通して彼女の声が聞こえる。



「《ばんちゃん・・・?やっぱりだ》」



彼女を探しに出てだいぶがたつが、

おじさんとも呼べる

年齢になった俺に比べ、

彼女は美しい少女のままだ。


「《ばんちゃん・・・もう、地球の最後がきちゃうけど、終わりにしよう?》」


「そうだね」


「わたしね、ばんちゃんの夢の中に入って、ここと番号教えたんだ」


「やっぱりか」


「もう、終わりたい」


「分かったよ」


俺はキーボードに夢で見た

暗証番号を打ち込んだ。


器械音が鳴ってクリア。


俺は彼女の生命維持装置の

電源をきるボタンを、

少しためらったあと、


押した。




ー☆ー

秋桜の木

コスモスの木がはえている親友の家の中庭で、遊んでいる時だった。


二階のらんかんの方から、少年の声がした。


「君、誰?」


そう言ったのは親友の兄。


すぐあとに来た兄の方の親友の姿を認めると、親友は恥ずかしそうに目を伏せた。


合流すると、かぶっていたキャスケットを取られ、ぎょっとされた。


胸元まである長い髪がさらされた。


「女の子?」


ボーイッシュで当時の一人称が「僕」だったわたしの、初恋の相手は、親友の兄だった。


それからは四人でつるんで遊ぶようになり、やがて時はたった。


戦士隊に入ったと聞いたのは急なことで、身ごもった親友は動揺に泣いた。


あとを追いかけるように、わたしは戦士隊に入った。


久しぶりの再会は突然だった。


廊下を歩いている時によびとめられ、雑務の手伝いをしようと両手がふさがった。


帽子を、誰かが奪い取った。


驚いて振り向くと、そこにいたのは親友の兄。


「髪、切ったのかよ?」


泣きそうになるのをがまんして、やっぱりこのひとが好きなんだと思った。



ーー・・・彼が戦死した。



はからいで、わたしが里に一時的に帰り、知らせをすることになった。


子供を産んだ親友と、お腹の子の父親である彼の親友も泣いた。


コスモスの木がある中庭に通してもらって、ひとりでぶらつく。


誰かに呼ばれた気がして二階を見上げても、そこには誰もいなかった。


妙に、感傷的になっている自分をしったしたくなるまで、少し、時間がかかった。






ー☆ー

陽の香り

新たなる道をゆけば、聖堂へと


今はまだ暗闇の中 星を見つけて


惹かれゆくその輝きに命は還り


また祝福がはじまる


陽光の香りに木漏れ日は喜び踊り


さやか水は起源をしるし


やがてまた人々は安息の眠りにつく


うまれる言の葉に心は耕され


いつか夢見たあの笑顔へと


命運び 真実の優しさとひとつになる


いでた美しきその歌声に


花は咲き、小鳥は飛び、風は吹き、月は照る


あの海と空の境界線のように


わたしたたちは あるのかもしれない







ー☆ー